エーテル

佐々木岳人

日本和文化グランプリ2022 準グランプリ

幅31×奥行16×高さ16cm

材料:漆、麻布、和紙、金、貝殻、顔料
技法:乾漆、変り塗り、蒔絵、螺鈿

一見するとファスナー付きの革製品に見えるこの作品ですが、実は伝統的な漆の技法を用いて作られています。麻布に漆を重ねる乾漆の技法で成形し、金具には蒔絵*、革の質感を再現する変わり塗り**を施しています。これらの作品のテーマは「知覚を可視化する」こと。ファスナーや革製品は、私たちにとって馴染み深いものであり、まるで「中身を覆う面」のようです。この作品は、ファスナー付きのシンプルな箱で、開けることはできません。蓋を開けると、黒漆の上に螺鈿細工が施されており、漆から生まれた作品であることが分かります。

※蒔絵とは、漆で絵や模様を描き、漆が乾く前に金粉や銀粉を蒔きつけ、漆の粘着力で固めて模様や模様を形成する技法です。
※※「くわり塗り」とは、漆の特性を最大限に活かした技法の総称です。色漆を幾重にも塗り重ねて磨き上げたり、漆の接着力を利用したりと、様々な技法が含まれます。
参考:KOUGEI STANDARD - JAPANESE CRAFTS ONLINE MEDIA: https://www.kogeistandard.com/resource/

漆を塗り重ねることで、しなやかで美しい表面が生まれる一方で、時にその奥にあるものが見えにくくなることがあります。こうしたジレンマは漆芸ならではの魅力ですが、私たちの身の回りの様々な物事にも通じるものがあるように思います。例えばお金。数字で価値を測るには便利ですが、数字に囚われすぎると、その真の価値を見失ってしまうこともあるのです。

現代社会においては、表面的なことだけでなく、そうした「目に見えない部分」にも目を向けることが大切だと思います。同時に、目に見えないところに誠実さを求めることは、漆芸に限ったことではなく、日本の文化を支えてきた大切な精神なのです。

日本の職人技は長い歴史の中で磨かれてきました。

日本の職人が隠れた細部にまで注ぐ献身と配慮こそが、この製品をユニークで魅力的なものにしているのです。

日本の工芸作家として、これからも日本文化の本当の魅力を理解し、伝えていくために努力していきます。

——佐々木岳人

漆芸家 / 佐々木学人

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